「運河の俳句」の記事一覧

運河の俳句 8月号より
蛇日和    谷口 智行妖しくも眩し梅雨入の熊野灘僧房を遺す神領さるをがせ田頭に寄り合うてゐる蛇日和孟夏なれリヤカーに置く拡声器谷蟆か小豆洗ひの音きこゆ休耕の御饌田に散りて竹の皮青梅雨の草木鳥獣虫魚かなお互ひの見ゆるところに昼寝せりいちれ…
運河の俳句 7月号より
五月憂し      谷口 智行 春雷のただよふごとく遠ざかるひじき蜑海のうねりをくねりといふ言ひわけをせざる生きざま焼栄螺雉の声コーセーセンクーと聞こえけり煙雨とて山割る力花うつぎ海風の届かぬ鄙に海桐咲く吾のみ知る七里御浜の青大将ふた…
運河の俳句 6月号より
山 吹               谷口 智行山吹や筏流すに巌毀ちつづ桶に蕾の桃をひさぎをりものいひのやさしひひなの日の姉は春笋を掘れり晴れても曇りても鳥の名はとき魚に訊けよ風光る   「とき魚」は深耕集の檜尾とき魚さん野遊を終へてたがひ…
運河の俳句 5月号より
もの言ふくちびる                谷口 智行鰹来るころ海境のすみれいろ波音をそがひに蕗の若葉摘む芳春の紀へと運河の引かれけりお四国のまんまんなかの山桜春の鳶港の空に飼はれゐる米の田の四方をかこみて麦青む乾きたる水車のきしむ登…
運河の俳句 4月号より
恋のささやき   谷口 智行 きさらぎの伯母峰おもふ平群をおもふ   灘沖のひかりまぶしき涅槃かな山ひとつ越えきて楤の芽を摘めりちるものはちりてさくらの咲きそろふ花筏ちさき手波にくづれけりぶらんこをしつらへてゐるホルトノキ春昼の止血鉗子を落…
運河の俳句3月号より
谷口 智行寒のいかづち初日出づ潮ふくらむきはみより木々の秀は神の依代むつび月初電話天麩羅揚ぐる音聞こゆしたたかに寒鰤を獲て帰りくる師を思へば寒のいかづち一つ鳴る杜ふかくゆらげる灯し紀元節韓のひと芹葉黄蓮掘りゐたり梅探る木雫止むを見はからひ…
蠟梅
運河2月号より
鷹ひとつ  谷口智行奈良かつて大和湖の底竜の玉大和にも縄文海進うつた姫開戦日ぐらり止まる波がしら時化あとの波音近き障子かな延縄の大博打とて九絵ねらふ        『万葉集』に、鷹狩に興ずる大伴家持から逃げた「大黒」という鷹ありて、鷹ひと…
運河の俳句 1月号
野老飾る  茨木和生 山で掘り来たる野老を飾りけり      2022年版「俳句年鑑」より転載 歳神を讃ふる吉書束ねけり持込みの酒のいろいろ薬喰赤土を二鍬のせて葱囲ふ地に触るるごとくに飛んで綿虫は山畑の畝間落葉を入れ足せり松二本立てて年縄掛けに…