運河俳句会について

右城暮石(うしろ・ぼせき)は1899年に高知県で生まれ、大正年間に大阪へ出て関西電力の前身大阪電灯に就職。
松瀬靑々(まつせ・せいせい)に師事して「倦鳥」を中心に俳句の修業を積みました。

暮石は1952年(53歳)から富雄句会の会報誌「筐」(かたみ)を発行し、1956年に「筐」を「運河」に改題して暮石の主宰誌「運河」が誕生しました。同人21人からのスタートです。

暮石は生前、6冊の句集を刊行しました。

綿虫を誓子指ざし三鬼つかむ   『声と声』(近藤書店、1959年)

いつからの一匹なるや水馬    『上下』(運河俳句会、1970年)

妻の遺品ならざるはなし春星も  『虻峠』(角川書店、1981年)

上げ泥に蝌蚪の形の現るる    『天水』(運河俳句会、1985年)

大根が一番うまし牡丹鍋     『一芸』(富士見書房、1989年)

散歩圏伸ばして河鹿鳴くところ  『散歩圏』(角川書店、1994年)

1990年に暮石は主宰を茨木和生に譲り、名誉主宰となりました。

「運河」主宰を暮石から引き継いだ茨木和生(いばらき・かずお)は1939年に奈良県で生まれ、私立高槻中学校・高等学校に就職。右城暮石と山口誓子に師事して「運河」、「天狼」を中心に俳句の修業を積みました。

2021年12月末時点で、和生は15冊の句集を刊行しています。

傷舐めて母は全能桃の花     『木の國』(飛鳥書房、1979年)

水替の鯉を盥に山桜       『遠つ川』(禽獣舎、1984年)

山桜もみぢのときも一樹にて   『野迫川』(禽獣舎、1988年)

ひよんの笛力まかせに吹かずとも 『丹生』(富士見書房、1991年)

抵抗をせず白魚の汲まれたる   『三輪崎』(熊野大学出版局、1993年)

のめといふ魚のぬめりも春めけり 『倭』(角川書店、1998年)

洗はれてゐて流されず蛇の衣   『往馬』(ふらんす堂、2001年)

さざなみはひかりを呼べり麦の秋 『畳薦』(角川書店、2006年)

宙を行くごとく歩けり草いきれ  『椣原』(文學の森、2007年)

大阪は朝から蒸せて鱧の皮    『山椒魚』(角川書店、2010年)

酒機嫌よきもの寄りて夜振かな  『薬喰』(邑書林、2013年)

落花せず闇に大揺れしてをれど  『真鳥』(KADOKAWA、2015年)

言うてみるもの夏鹿の肉貰ふ   『熊樫』(東京四季出版、2016年)

山高く棲みゐる家の吹流し    『潤』(邑書林、2018年)

河鹿鳴くところまで行き戻りけり 『恵』(本阿弥書店、2020年)

                

2022年1月に和生は主宰を谷口智行に譲り、名誉主宰となりました。

「運河」主宰を和生から引き継いだ谷口智行(たにぐち・ともゆき)は1958年に京都府で生まれ、大阪府で医師として就職、のち三重県で開業。茨木和生に師事して「運河」を中心に俳句の修業を積みました。

2021年12月末時点で、智行は3冊の句集を刊行しています。

縫へと言ふ猟犬の腹裂けたるを  『藁嬶』(2004年、邑書林)

ぶらんこを漕ぐまたひとり敵ふやし『媚薬』(2007年、邑書林)

ふんだんに星糞浴びて秋津島   『星糞』(2019年、邑書林)