大石 久美 記

5月7日(日)

 昨夜からの断続的な雨の中、今日は山の辺の道吟行だった。

 桜井駅北口からタクシーに分乗し、大和川の岸に建つ仏教伝来の碑の近くから大神神社・狭井神社までのおよそ1.8キロが吟行のコースである。

 岸辺に花うばらや海芋が咲き青梅の落ちている大和川を渡る。雨で増水した川はごうごうと音を立てていた。

 馬鈴薯の花やえごの花、柿の花、真っ赤な野苺を見ながら民家の間を縫い、海柘榴市(つばいち)観音堂に到着。

海柘榴市は、古代東西南北の陸路や難波への水路が集まる交通の要衝で、市が立ち歌垣も催されていたところである。

観音堂から見える山の斜面には雨に洗われた樗の花も美しい色を見せていた。

 今も大神神社の門前町としての佇まいを見せる街道を過ぎ、山の辺の道に出ると景色は一変する。金屋の石仏と喜多美術館が目に入ると同時に、一面に花を散らした針槐と大きく枝を伸ばした橡の大木に出会う。

目の高さで橡の花を観察した。嬉しいことだ。

 大神神社を過ぎ、医薬の神様と呼ばれる狭井神社へは「くすり道」と呼ばれる石段を辿る。

この道では製薬会社や医薬品協会の協力で薬草木を栽培している。今回のお目当ては、めったに見られない銀竜草。少し花期が過ぎていたようだが、句帳を濡らしながらたっぷりと緑雨を感じた吟行だった。

銀竜草 ギンリョウソウ (別名 ユウレイタケ) 瓜阪孝依 大神神社境内にて撮影

銀龍草